2011年10月30日日曜日

フライブルグの大学町

シュロスベルグから大聖堂と旧市街を望む

2011/04/20

1.フライブルグの町


フライブルグは、シュロスベルクの丘とドライザム川に沿って発達した、美しい大学町です。ドイツ南西部のバーデン・ヴュルテンベルク州にあり、ライン川を挟んで西にフランス国境と面しています。ライン川に沿って電車で40分も走ると、スイスのバーゼルへ行ける近さです。ドイツの中でも最も温暖な気候で、シュバルツバルトの森に囲まれた自然豊かなロケーションです。
記録によれば、町のはじまりは12世紀頃まで遡ります。1120年に、ツェーリンガー公コンラッドとベルトルト3世によって、都市の定住と自由な市場との権利が与えられ、これが町のはじまりと考えられています。フライブルグ(Freiburg)は、その名の通り古くから自由で独立した(Frei)都市(burg)だったのです。当時は人口6000人ほどで、シュバルツバルトの森で銀採掘をして収益を得ていたようです。その後、ドナウ川の南北のルートと、シュバルツバルトを抜けてドナウ川へ抜ける東西のルートとが交わる交通の要所として、次第に発展しました。18世紀にはカトリックの司教座が置かれ、町の発展に拍車をかけました。
残念なことに、第二次大戦によって町の半分ほどが消失しましたが、それでも古い市街地(アルト・シュタット)には、中世の面影を残す建物が多く残っています。13世紀に建設が始まったゴシック様式の大聖堂をはじめ、旧市庁舎(アルテ・ラートハウス)、旧商館(ヒストリク・カーウハウス)など、多くの建物が中世に建てられています。

2.大学の歴史


町を歩いて目を引くのは、大学の建物の多さです。1457年、オーストリア大公アルブレヒト6世によって創立されたフライブルグ大学は(フライブルグは、一時期ハプスブルグの支配下にありました)、ドイツの中では、ハイデルベルグ大学などに次ぐ古い大学の一つです。校訓には、ヨハネ福音書から取った「真理は汝らを自由にする。(Die Wahrheit wird euch frei machen.) 」とあります。
長い歳月には、アカデミックな歴史と伝統が刻まれています。哲学者エトムント・フッサール、マックス・ウェーバー、マルティン・ハイデッガーなど、著名な学者が教鞭を執った事でも知られています。ハイデッガーは、後に学長まで務め、フライブルグ大学の名声を高めることに貢献しました。卒業生には、哲学者ハンス・ゲオルク・ガダマーや社会学者ニクラス・ルーマンがいます。
創立時には医学、法学、哲学、神学の4学部でしたが、現在は11学部を擁するドイツでも数少ない総合大学に発展しています。学生数は2万人、教職員数は9000人に達していますので、人口約20万人のフライブルグでは、実に10人に1人が大学関係者という計算です。大学が町の雇用をも生み出していると言っても、過言ではありません。事実、ドイツは歴史的に地方分権が進んでおり、古くからある公立大学のほとんどは、州立大学です。そのため学部の創立や移転など、大学の運営には州政府の意向も反映されます。



フライブルグ大学の校訓 
「真理はあなたがたを自由にする」

3.ドイツの大学

フライブルグは、ドイツの中では最も南西に位置しますが、フランス、スイス、イタリアなどを含めた西ヨーロッパの地理を眺めると、ほぼ中央に位置しているのがわかります。EU加盟以降、ドイツの各大学は垣根を越えたアカデミックな交流を目指しています。
教育レベルの交流では、有名な「エラスムス制度」が挙げられます。エラスムス制度とは、学部生がEU加盟国内の他大学に長期間滞在し、取得した単位を所属する大学の単位として認定するもので、ヨーロッパ各地で勉学したロッテルダムのエラスムスに因んでいます。エラスムス制度には、様々な特典があり、無料で語学研修を受講でき、様々なエクスカーションにも参加できます。このように、学生にとって様々な可能性と選択肢があるわけですが、逆に自立的に学習プログラムを作ることが難しい学生にとっては、単なるバケーションとなってしまう危険があります。実際、ギリシアのテッサロニキ大学で留学中に、エラスムス制度で留学している学生と接触する機会がありましたが、勉学の熱意は、ギリシアへ留学している外国人留学生と比べても、あまり高いとは言えませんでした。
研究レベルでは、国境を越えて大学間が連携を深めています。フライブルグ大学は、地理的に近いバーゼル大学、ミュールーズ大学、ストラスブール大学およびカール・スーエ工科大学と共に、緊密な連携協定を結んでいます。さらに、フライブルグ大学は、ヨーロッパ研究大学同盟(League of European Research Universities)に加盟しています。学術研究分野において質・量ともに優れていることが加盟の条件とされており、全部で21の大学が加盟し、ドイツからはハイデルベルグ大学、ミュンヘン大学とあわせて3つだけが加盟しています。
フライブルグは、その地理的影響もあって、フランスやスイスの国境を越えて教職員が通勤することが、すでに当たり前になっています。その意味では、大学に限らず、市民レベルでの人的交流がますます加速していると言えるでしょう。さらに、ドイツの人口の10%以上は外国人と言われています。学生も例外ではなく、特にアフリカや中東からの留学生は増加傾向が続いています。フライブルグ大学のように長い歴史と伝統のある大学も、国際化の中での大学あり方が問われているようです。